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大阪高等裁判所 昭和44年(う)463号 判決 1969年7月18日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は弁護人露峰光夫作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は検察官早川勝夫作成の答弁書記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨第一点、法令適用誤りの主張について、

論旨は、原判決が執行猶予期間の満了により失効した確定裁判とその前に犯された罪とは刑法四五条後段の併合罪に該るとして同法五〇条を適用したのは法令の適用を誤つた違法があるというのである。

そして、原判決が原判示第一の各罪と大阪簡易裁判所昭和四〇年一二月四日言渡、同月一九日確定の賍物故買罪による懲役一年および罰金五〇〇〇円、懲役刑につき三年間執行猶予付保護観察の確定裁判による罪とは刑法四五条後段の併合罪の関係に立つとして同法五〇条を適用し、右第一の各罪は更に同法四五条前段の併合罪に該るとして量刑処断していることおよび右確定裁判の刑が原判決言渡時(昭和四四年三月一四日)、懲役刑は執行猶予期間の満了により効力を失つたことは所論のとおりである。しかしながら刑法二七条により執行猶予期間の満了により刑の言渡が効力を失うというのは具体的な刑の言渡の効力を将来に向つて消滅させるだけで、有罪の確定判決のあつたという客観的事実までも消滅させることを規定したものではないと解するを相当とするから、同法四五条にいう確定裁判のうちには刑につき執行猶予の言渡をうけて確定した裁判がその後同法二七条により刑の言渡がその効力を失つた場合をも含まれるものと解するのが相当である。さすれば原判決が右確定裁判と原判示第一の各罪とは同法四五条後段の併合罪に該るとして同法五〇条を適用したことは当然であつて何ら所論のような法令適用の誤りはない。右所論は失当である。

論旨第二点、事実誤認の主張について

論旨は、原判示第一の(二)(第二の(二)とあるのは誤記と認める。)の事実は、凡て斉藤マサミの犯行であつて被告人は無関係であるというのである。

しかしながら原判決挙示の各証拠、特に被告人の司法警察員に対する昭和四二年一一月二四日付供述調書、検察官に対する同月三〇日付供述調書および原審第三回公判調書中の証人森田繁の供述記載によれば、窃盗本犯森田繁は被告人に盗品たる株券の処分を依頼したところ被告人もこれを承諾し、当時被告人方に世話になつていた斉藤マサミと三名で右株券隠匿場所に出向き、当日は右森田から被告人が右株券を預り、翌日被告人の指示をうけた斉藤マサミがこれを処分し(尤もその代金の大部分を着服して被告人方を出奔した。)たことが認められるのであつて、右事実からすれば窃盗本犯森田がその窃取した株券を預けた相手方は被告人であつて同人が直接斉藤マサミに預けたのではなく、右斉藤マサミは被告人の指示を受けこれを処分したものと解するのが相当であるから、被告人の右所為が賍物寄蔵罪に該当することは明らかである。さればこれと同旨の原判決の認定には何ら所論の違法はなく所論は失当である。

その余の論旨は量刑不当を主張するのであるが論旨第一、二点がいずれも失当であることは前叙のとおりである以上、右各論旨が理由があることを前提とする量刑不当の主張は立論の前提を欠き、その他記録を精査してみても本件の罪質、態様、被告人の経歴等の諸事情に照らすと、原判決の刑が重過ぎるとは考え難いから右所論も失当である。

よつて本件控訴は理由がないから刑事訴訟法三九六条によつてこれを棄却することとして主文のとおり判決する。

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